2010年9月7日に日本助産師会が発表したホメオパシーの使用に関する実態調査によると、日本助産師会の会員のうち36か所の助産所で過去2年以内にビタミンK2シロップを 投与しなかったことがあることが判明した。同36か所では、ビタミンK2シロップを投与せず、ホメオパシーで用いられる「レメディー」を投与していた。調査は2010年7月末から2010年8月下旬にかけて実施。同会会員のうち分娩を取り扱う開業助産所433か所を対象に調査を行い、分娩業務を休止している19か所を除いた414か所から回答を得た。
ビタミンK2には出血を抑える効果があり、新生児へのビタミンK2投与は、医療現場では常識となっている。ホメオパシーは「同種療法」とも呼ばれ、薬を使わずレメディーと呼ばれる砂糖玉を用い自然治癒力を高め病気を治療しようとするもので、8月の日本学術会議ではその科学的根拠が否定されている。2010年5月には山口県で、ホメオパシーにより、乳児がビタミンK欠乏性出血症で死亡した問題があった。日本助産師会では会員に対し、助産業務としてホメオパシーを使用しないよう指導している。
調査によると、調査時点では、ビタミンK2シロップを投与に関しては、全助産所が「投与している」と回答している。
ただし、「過去2年以内にレメディーを投与してビタミンK2を投与しなかったケース」について、「取り扱ったことがある」と36か所が回答した。その主な理由は、「薬剤拒否の妊婦にどうしてもと頼まれてビタミンK2を投与しなかった」、「ビタミン K2シロップ とホメオパシー双方の説明を行い、妊婦の選択によってレメディーのみ投与した」などだという。
日本助産師会の岡本喜代子専務理事は、「ビタミンK2を投与するのは当たり前のことなので、36か所は多いと受け止めている」とコメントしている。
厚生労働省医政局は同日、調査結果を受けて同会会長あての通知を提出。通知では、乳児に対するビタミンK2シロップの適切な投与と、投与を望まない妊産婦に対してリスクなどを十分に説明することが重要と指摘している。更に、会員への周知徹底や必要に応じた研修の 実施などを求めている。
日本助産師会では、調査結果に問題のあった36か所の助産所に対し、レメディーを使用しないよう指導を実施した。また、ビタミンK2の投与などに関する研修や個別指導を、全国47支部の安全対策委員らによって行う予定だ。