理化学研究所多細胞システム形成研究センターと住友化学は、ES細胞(胚性幹細胞)から網膜組織に近い組織の作製に成功したことを発表。英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズにて論文が掲載された。研究や論文作成に参加した故笹井芳樹氏も、著者として名を連ねている。
(参照:細胞の糖化がシミの発生に関係 研究結果)
理化学研究所多細胞システム形成研究センターと住友化学は、ヒトのES細胞から網膜組織に近い組織の作製に成功した。これまで研究が進められてきたが、細胞が整然と並んでいないなど品質への課題が残っていたため、今回はそれらの課題をふまえ、ES細胞の培養法を工夫し品質の問題も小さくした。その結果、約8割の高効率で複雑な網膜細胞に近い組織に変化させることができ、安定して作製することに成功した。
一方、iPS細胞(人工多能性幹細胞)による網膜細胞移植も進められており、今年6月にはすでに2例目の実施が予定されている。非常に繊細な網膜の治療には、ES細胞やiPS細胞を用いた再生医療が非常に有効だとされている。しかしながら、皮膚や髪の毛を用いるiPS細胞に対し、ES細胞は人の受精卵を用いるため、倫理的に問題があるという意見も多くある。