近年、日本における女性医師の数は急激に増加してきました。
しかし、増加すると共に女性医師の妊娠・出産に伴うサポート制度が整っていないことが浮き彫りになってきています。
医師不足が叫ばれて久しい日本の過酷な医療現場を作る原因の1つに、「女性医師の増加とその対応策の遅れ」が挙げられるほど。
日本の女性医師の勤務形態は諸外国と比べてどのようになっているのでしょうか。
女性医師をめぐる問題とは
医師国家試験合格者の男女比は年々変化し、平成7年は23%だった女性の割合が、平成26年には31%にまで増加。
日本における女性医師の割合は全体の18%となっており、こちらの数値も年々上昇傾向にあります。
ところが、女性医師の就業率は年齢に合わせてM字カーブをたどっており、35歳前後で最も就業率が低くなるのです。
女性医師の離職の理由で最も多いのは「出産」、その次は「子育て」です。
このことから、ライフイベントに伴い、医師としてのキャリアを諦めることを余儀なくされる女性の数が非常に多いことがわかります。
その後じわじわと就業率は回復していきますが、産休取得後に職場復帰を果たした女性医師は約6割、育休取得後の職場復帰後となると約4割と少なくなっています。
キャリアアップと家庭の両立を阻む原因
女性医師のキャリアアップを阻む原因として、母や妻としての「社会的な」女性の役割、そして医師の過酷な就労環境が挙げられます。
家庭では妻として、母として家事をこなすことが求められ、職場では医師として過酷な労働に就くことを求められる。
その両立の難しさから、結婚・出産といったライフイベントを機に医療の第一線を退き、パートやアルバイトとして勤務する女性医師が増えています。
第一線を退く女性医師が増えることで医療の現場がさらに過酷な環境になり……と悪循環をたどっているのです。
女性のライフイベントに関連する制度には、「産前・産後休暇」や「育児休暇」がありますが、職場からの理解を得られずに休暇後の復帰が難しくなってしまっているのが現状です。
モデルとすべき海外の制度は?
アメリカやイギリスなどの諸外国でも、女性医師からワークライフバランスについて不安を感じる声は上がっています。
一方、女性医師が全体の約40%を占めるスウェーデンでは、仕事と子育てを両立させるためのシステムが整っています。産後育児休暇は夫婦で合計480日間。
このうち60日間は父親のみが取得できる期間となっており、男性の積極的な子育てへの参加が促されています。
日本の女性医師から子育てと仕事の両立のために必要な条件として挙げられているのは、「職場の理解」「短時間勤務制度」「配偶者や家族の支援」など。
スウェーデンでは、男性が育児に参加する機会を与える制度によって育児への理解が深まることで、女性医師の働きやすい環境が整っていると考えられます。
女性医師のキャリアアップと家庭の両立を支援して離職率を低下させ、医師不足を解消するためには、子育てへの理解が何より必要です。
まだまだ「家庭を守るのは母である」という意識が強い日本。
それを支援するための短時間勤務制度や時間外勤務の免除といったサポート制度への理解を深めると同時に、夫婦で一体となって育児に参加する姿勢を推進していくことが必要なのではないでしょうか。
女性医局では、女性医師が生涯にわたってキャリアを継続・向上できるように、30代半ばの就業率の最低ラインと言われる現在の76%から、M字カーブを回復ラインの82%に引き上げる「+6%プロジェクト」を実施しています。
ご賛同いただいている医療機関をご紹介している他、同じ女性医師として働く先輩方のコラムを掲載しておりますのでぜひご一読ください。
http://www.josei-ikyoku.jp/plus-six-project/