高齢化の進む日本において、高齢者が住み慣れた地域で自分の最期を迎えることができるよう、「地域包括ケアシステム」の実現が推進されています。
その一環として推奨されているのが「在宅医療」です。
しかし、一般的に「医療」と言えば患者が病院へ赴くことを連想する人が多く、在宅医療への認知度はまだまだ低いのが現状と言えます。
在宅医療や在宅介護への意識を高めていくにはどうすればよいのでしょうか?
在宅医療の必要性
少子高齢化時代に伴い、入院をする高齢者の数は年々増えて続けています。
2015年の死亡者数は129万人を越え、そのうち病院で亡くなった人は約96万人にも及びます。
この死亡者数は2040年には167万人にまで達すると推計されており、これに対応するためには全国的に病院のベッドを増やしていく必要があるといえるでしょう。
しかし、現実的な問題として、病棟の新設・ベッドの増床には建築コストや維持コストがかかってしまうため、そう簡単に進められるものではありません。
そこで必要になってくるのが、在宅医療の認知度を高め、在宅看取りを普及させることなのです。
住み慣れた環境で最期の時を
一般的な認識として、「医療イコール病院」であり、「病気は病院で治してもらう」という感覚が非常に強いのが現状です。
一度病気をした高齢者が、そのまま病院のベッドに寝たきりになってしまうケースは少なくありません。
入院生活が続くことで身体の医療依存が高まり、体力や身体機能が低下しやすくなってしまうのです。
医療依存が高まってしまうと、一度退院できたとしても、体調を崩しては入退院を繰り返すといった生活になりかねません。
この状況が変わらなければ、病棟に入れず、受け入れ可能な場所のない高齢者が溢れてしまうことになってしまいます。
しかし、住み慣れた場所で落ち着けることがないままに、入退院を繰り返しながら迎える死は果たして良いものでしょうか?
高齢患者の中には、「自宅で療養したい」と考えている方も決して少なくありません。
在宅医療の普及は、人間の尊厳を維持し、その人らしい最期を迎えるために必要な取り組みでもあるのです。
在宅医療の認知度を高め、広く浸透させていくためには、医療現場と地域が連携し、在宅医療や訪問診療で対応できる割合を増やしていくことが大切です。
徐々に増加はしているものの、在宅医療を提供している医療機関の数はまだまだ多いとは言えません。
医療機器や情報管理システムの進歩により、在宅医療で行える診療の質も向上していっています。
国も推進する分野である在宅医療について、医師、患者共に今一度考えてみるべき時期にさしかかっているのではないでしょうか。