メディアでもたびたび取り上げられていますが、今産婦人科医の減少が医療業界で問題になっています。医師全体を科目別に分けると、一番多いのが内科医で、産婦人科医は最も少ない科目に分類されているのです。
とくに若手医師の産婦人科医はとても少なく、地方では今後増える見込みもないそう。
なぜ産婦人科医はこんなにも減少してしまったのでしょうか。
今回は、産婦人科医の現状と、減少の理由についてお話しいたします。
オーバーワークに悩まされる産婦人科医
出産予定日は前後することも珍しくありませんし、赤ちゃんは必ず昼間のうちに生まれてきてくれるというわけでもありません。陣痛が起こってから分娩室に入り、10時間以上生まれないということももちろんあります。
産婦人科医は、こうした過酷なお産をサポートしなければいけないので、結果的に24時間体制で働くことになってしまいます。このようなオーバーワークに慣れていない若手医師にとっては大変なことですが、ベテランの医師であってもかなりの体力と気力がなければ産婦人科医を続けることは難しいほど。産婦人科の仕事がオーバーワークであることは、医師減少の原因の1つとなっています。
訴訟問題になったことも引き金に
2006年に、福島大野病院で前置胎盤の妊婦が亡くなってしまったことで、産婦人科医が業務過失致死にあたるとして逮捕されるという事件が起こりました。
2008年には無罪となりましたが、この事件によって産婦人科医が他の科目に転科したり、産婦人科医を目指す学生が減るきっかけになったといえるでしょう。
出産は決して安全なことではありません。母子ともに命がけです。ただ、それを世間に理解してもらえず、一方的に産婦人科医が糾弾されることも珍しくありません。
医師という仕事上どの科目であっても責任が重大ですが、やはりこういった訴訟問題が実際に起きてしまうと、産婦人科の責任感の大きさが露見し、わざわざ危険な道に進もうと思う医師は減ってしまうというわけです。
男性医師を嫌がる妊婦もいる?
妊婦の中には、男性の産婦人科医を嫌がる人もいます。女性医師を希望する妊婦が増えると、当然女性医師の需要は増えてオーバーワークになりますし、男性医師にとってはやりがいを感じられなくなってしまいます。「男性医師は産婦人科医にはいらないのだろう」となってしまえば、当然産婦人科医は減少してしまいます。
産婦人科医がこのまま減少し続けてしまうと、「出産難民」が増えることになってしまいます。少子化といわれる現代ですが、病院での出産を希望する妊婦が希望の病院に受け入れてもらえないということはよく起こっているのです。
命の誕生を支える産婦人科医。責任は重大でハードな仕事ですが、その分のやりがいは感じられる仕事です。今後、産婦人科医を目指す若手医師や、転科してくる医師が増えることを願いましょう。