現在、日本に在留している外国人の数はおよそ230万人。2020年のオリンピック開催に向けて、日本を訪れる外国人の数はさらに増加すると考えられます。
そこで問題となるのが、医療機関での外国人患者の受け入れ体制です。
今後確実に増加する外国人患者に対し、どのような対応をしていけばよいのでしょうか?
正しく診察し、トラブルなく治療を終えるために押さえておきたいポイントをお伝えします。
“言葉の違い”への対策
外国人患者を受け入れる上でまず立ちはだかる問題が、言葉の違いです。
日本語の中だけでも、「ずきずきとした痛み」「刺すような痛み」など、“痛み”を表現する言葉は数多くあります。そこに国ごとの表現の違いが加わることを考えると、日本語で正しく症状を伝えられる外国人患者は非常に少ないと言えるでしょう。
日常的なやり取りが可能な外国人患者でも、日本語だけでコミュニケーションを進めてしまうのは危険な場合があります。
医療通訳がいない場合、図や会話用ボードなどを用いることで、言葉の違いによるトラブルを防ぐことが大切です。
“文化の違い”への対策
言語の違いと同様に、医療文化や医療に対する意識にも国ごとの違いがあります。
「自分の国では2回で終わるような治療が長引いている」「検査結果の説明が細かすぎて重要な部分がわからない」など、文化の違いが患者の戸惑いや不安を呼んでしまうことも少なくありません。
文化の差を埋めるためには、患者とのコミュニケーション能力を高めるだけではなく、海外の医療文化に関する知識を深めておく必要もあるのです。
特に日本在留者の多い中国や韓国、アメリカ、フィリピン、ブラジルといった国の医療文化は、最低限把握しておくことをお勧めします。
いかがでしたか?
厚生労働省が医療通訳の養成に関するカリキュラムを定めるなど、政府も医療機関の外国人患者の受け入れ体制整備に向けて動き出しています
まだまだ先のことと問題を先送りにしていれば、いざという時になって慌て、言葉や文化の違いが重大なトラブルへと繋がってしまう可能性もあるのです。
これまで外国人患者の受け入れ経験がない病院も、今後は多くの患者が訪れ始めると予想してしっかりと対策を講じておかなければなりません。
ウェブ上では、医療通訳の派遣機関や国際医療情報センターなどが作成した外国人患者受け入れ対応マニュアルをいくつか公開されています。それらを参考に、多言語問診票や会話ボードの準備、独自のマニュアル作成などを行って受け入れ体制を整えていきましょう。