近年、テレビや雑誌、SNSなどのメディアで目にする機会の増えた「VR」という言葉。
昨年は、全国でVR体験イベントが行われたり、ソニーが家庭用VRゲーム機「PlayStation®VR」を発売したりと大いに話題を呼びましたよね。
VRは英語の「Virtual Reality(仮想現実)」を省略したもの。VR技術とは、機器を用いることで視覚や聴覚をはじめとする身体感覚に働きかけ、3次元空間への没入感を与える技術です。
今回はVR技術に期待される医療業界での活躍、現在検討されている活用方法などをご紹介します。
手術現場をVRで擬似体験
昨年4月、イギリスの王立ロンドン病院は、世界初となるがん手術のVRライブストリーミングを行いました。
執刀医は同病院のシャフィ・アーメド医師。360度撮影することができるカメラを手術室内に2台設置し、万が一の事態を想定して約1分遅れで映像を配信しました。これにより、スマートフォンとヘッドセットを準備するだけで、自宅にいながら結腸がんの手術現場を仮想体験することができたのです。
このような試みは、手術の訓練に役立ち、遠くにいる医師からの助言を可能にすると考えられています。
PTSDの克服に向けた治療
アメリカでは、多くの帰還兵・退役兵士を悩ませるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療にVR技術が用いられています。PTSD患者にVR技術を用いて再び戦場を体験させ、原因となっている記憶・体験への耐性をつけていくのです。
PTSDやOCD(強迫性障害)の患者にあえて原因となる状況を体験させる「暴露療法」自体は古くから用いられている方法ですが、戦争体験が元のPTSDなど、状況の再現の難しさから治療が上手くいかない場合もありました。
VR技術の進歩により、暴露療法の効果も飛躍的に発展しているのです。
ロボット支援手術のガイド
手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いたロボット支援手術は、従来の手術における患者の負担を軽減し、肉眼では難しい角度からの視野を確保するといった最先端医療です。
ロボット支援手術の際、執刀医はサージョンコンソールという司令部からロボットアームを遠隔で操作します。
このとき、操作のガイドとして用いられるのがVR技術によって映し出される内視鏡カメラの3D映像なのです。
いかがでしたか?
今回ご紹介した以外にも、学生に向けた手術のシミュレーションシステムや幻肢痛の治療、認知症患者から見える世界の擬似体験など、VR技術はさまざまな方法で活躍しています。
これからの発展が期待される分野のため、今後もVR技術を用いたさまざまな治療法・治療機器が開発されると考えられるでしょう。