薬物依存という言葉を聞くと覚せい剤や危険ドラッグなどが頭に浮かびますが、実はこれと同じように、医師が出す「処方薬」に依存する患者が増えているといわれています。
もちろん薬の種類にもよりますが、効果が高くマルチに働きかけてくれる人気の薬ほど、患者の依存が高くなっているよう。
病気やケガなどへの痛みだけではなく、日常的な軽いストレスや悩みにも効いてしまうため、薬が手放せなくなり、次第に服用量が増えていくという悪循環に陥ってしまうのです。
決して見て見ぬふりはできない患者の処方箋依存や乱用。一体どのようにしたらこれを防ぐことができるのでしょうか。この問題を掘り下げて、解決策を探していきましょう。
患者の自己判断を防ぐ! きちんとした服薬指導を
患者の中には、「処方薬を飲んでいるけど、治らないからもう少し多めに飲もう」「腹痛とあわせて頭痛もしてきたから処方薬と市販薬を一緒に飲もう」「朝は時間がなかったから朝の分と昼の分をあわせて飲んでしまおう」このように自己判断で薬を服用してしまう方もいます。
これは長期的な解決を見越して行っているのではなく、目先の痛みや違和感を片づけるために行っているため、いろいろな種類の薬を勝手にあわせて飲んでしまうなどの危険性もあります。
このような過剰服用を防ぐためには、自己判断での服用の危険を事前にきちんと伝えておくことが大切です。勝手に飲む量を増やしたり頻度を高めたりしないこと、新たな痛みやケガなどがあった場合には医師に相談することなどをしっかりと確認させておきましょう。
処方薬の量や種類の見直しを定期的に行う
上記のような処方薬の過剰摂取をしてしまう患者がいる半面、「そろそろ服薬をやめたいと思っている」という患者もいます。
しかし、これまで効果の高い薬を使用していた場合、「やめたいのにやめられない」という薬への依存に悩まされている方も多いもの。これは、医師が薬を与え続けてしまったことも原因の1つです。
依存性が高くなりすぎないうちに、病状や本人の意向などもあわせて薬の種類や量を定期的に見直すことも大切です。
安易な処方はNG! 患者の状態と向き合って
今や「患者が病院を選び評価をするという時代」ともいえますが、本来は出さなくても良いはずの薬を出したり与えたりすることは、結果的にマイナスイメージにつながってしまうこともあります。
「患者が欲しがっているから」「薬を出さないと思われてしまったらいやだから」という理由もありますが、それぞれの症状に対してすぐに薬の処方を決めるのではなく、患者との時間を取ることも重要です。たしかに1人あたりの診察に長い時間をかけることは難しいかもしれませんが、患者の生活や習慣、環境などから適切な薬を処方することが大切なポイントとなるのです。
精神科などをはじめとして、医療現場では度々問題視されている処方薬への依存や乱用。
薬の過剰摂取は、患者の健康にはもちろん、医療費問題や診察の簡易化などのいろいろなところにも影響を与えています。
1人1人の医師がこの問題と向き合って、処方薬について今一度考え直してみることが大切です。