家族の中に重症患者や長期の入院患者を持つ方にとって、医師や病院は心の支えとなっているもの。とくに患者の容態が悪化したり急変したときなどには、患者家族は医師を頼るしかありません。
医師の仕事は病気やケガを治すことということはもちろんですが、患者やその家族のサポートも大切な仕事の1つです。不安でいっぱいの患者家族を少しでも安心させてあげるためには、患者の容態に変化があったときに優しく接するだけではなく、日頃から良好な関係を築いておくことが大切です。そこで今回は、患者家族と上手に付き合うための“患者家族との接し方”についてご紹介いたします。
がんなどの重症患者の家族との接し方
重症患者の家族は、病気への不安や恐れ、看病での疲れやストレスなどを抱えやすくなっています。とくに、がんなどの重症かつ再発の可能性がある病気の場合、家族は常に患者の死と隣り合わせの状態にいるといっても過言ではありません。
また、つらい治療や手術などで元気がなくなっていく病気の家族を見ていると、「今の治療で本当に治るのだろうか」「家族が病気と治療で苦しんでいるのに、自分は何もしてあげることができない」など、心に不安を抱いたり、自分を責めてしまう人も多いもの。
このように、患者家族が抱く病気への悲しみや恐怖心を少しでも緩和させてあげるためには、医師から優しく声掛けをすることも大切ですが、患者家族の話に耳を傾けるということが重要になります。顔を見かけた際には笑顔で話しかけ、会話を引き出してあげることで、患者家族の心を少しずつ軽くしてあげることができるでしょう。
入院患者家族との上手な接し方とは
家族の中に入院患者がいると、医師が見えない家庭の部分にも変化が起こります。
小さい子どもや学生であってもみんなで家事を分担したり、仕事の合間を縫って看病のために病院に顔を出したりと、自分の予定や時間をほとんど差し置いて患者のことを優先するようになります。すると、患者家族の体力が減っていくことはもちろん、心の余裕も徐々になくなって、看病自体が大きなストレスになり、看病疲れなどから患者家族がうつ病などの病気になってしまうケースもあるのです。
このような状態を避けるためには、医師が患者家族のことを日頃から気にかけ、心の限界がやってくる前にリフレッシュやストレス解消のための提案をしてあげることが大切です。
多くの患者家族は、闘病中の患者を目の前で見ていると、「自分だけ楽しんだり笑ったりすることはできない」「できることなら代わってあげたいのに」という思いを抱き始め、娯楽などを自制する傾向があります。
しかし、これは患者家族の体や精神の健康によくありません。患者家族に元気でいてもらうためにも、医師の意見として「時には看病から少し距離を置いて自分の時間を楽しむように」「リラックスすることも大切ですよ」と声を掛け、心のケアをしてあげることが大切です。
医師から優しい労いの言葉を掛けられることで、患者家族は「先生が言うなら……」と前向き気持ちで息抜きをすることができます。
患者家族の心と体は、常にギリギリのところで保たれているというケースも少なくありません。患者家族のことも患者同様のように考え、できる限りのサポートをしてあげられるように心掛けたいものです。治療を円滑に進め、医師としての信頼を手に入れるためにも、患者家族との接し方を今一度見直してみましょう。