主に外科手術などの際に身に着けるガウンは、患者と医療従事者双方の安全を保護するために欠かすことのできない重要なアイテム。
2017年、次世代を担う内視鏡治療関連医療機器の研究開発を目指す“大阪大学国際医工情報センター次世代内視鏡治療学共同研究部門(プロジェクトENGINE)”、医療衛生材料を取り扱う“大衛株式会社”、医療等に関係する特殊金属線の製造販売を行う“トクセン工業株式会社”の共同研究グループによって、「一人で着脱できる手術用ガウン」が開発されたことが話題となっています。
経済産業省によるサポートを受けて開発されたこの「セルフガウン」には、従来のガウンと比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
医療現場における“ガウン”の重要さ
手術の際は、患者の血液や体液、吐しゃ物、排泄物といった病気の感染元となり得る湿性生体物質に触れる可能性があります。たとえグローブを着用していても、衣類や皮膚に飛散してしまえば意味がありません。
そのため、液体が浸透せず、できるだけ広い範囲を覆えるガウンで医療従事者の体や衣類を防護することが大切です。
また、手術ごとにガウンを交換して新たに清潔なものを身に着けることで、衣類を通した患者同士の交差感染を防ぐことにもつながります。
従来のガウンには欠点も?
医療従事者と患者の双方を守るために必要なガウンですが、現在使われている従来のガウンには、着脱の効率や衛生面における欠点も。
清潔にガウンを着るためには、首ヒモ・内ヒモ・腰ヒモの3点を結ぶサポートスタッフの介助が必要となるうえ、脱ぐ際は初めにグローブを外すため、グローブに付着した体液が飛散してしまう可能性があるのです。
セルフガウン使用のメリット
前述した従来のガウンの欠点を見直し、衛生面のリスクを極限まで抑えるとともに、医療現場におけるスタッフの労働負荷を軽減するために開発された「セルフガウン」。
セルフガウンでは、首回りに特殊なリングを編み込み、背中部分の構造を見直すことで首ヒモ・内ヒモを廃止。さらに腰ヒモ部分に特殊な加工を施すことで、サポートスタッフによる介助を受けることなく一人で着用することが可能となります。
また、ガウンでグローブを巻き込むようにして2つを同時に脱げるような作りとなっているため、体液の飛散による感染リスクもほぼなくなるとされているのです。
新たに開発されたセルフガウンは、通常の医療現場での活躍はもちろんのこと、地震等の大規模な災害や感染症アウトブレイクといった現場での迅速安全な対応を可能とする画期的なアイテム。
医療現場のさらなる発展のためには、医療器具だけではなく、今回ご紹介したガウンのような非医療機器の開発も求められています。