2018年度から始まる新専門医制度では、評価する機関やサブスペシャリティ領域が新設されます。当初、2017年から開始されるといわれていた制度でしたが、1年延期となった間にさまざまな調整が行われています。
キャリアアップを目指す女性医師にとっても注目のこの制度。具体的にはどのような取り組みが行われるのでしょうか。今回は、開始が迫る新専門医制度についてご紹介いたします。
サブスペシャリティ領域が設けられた「新専門医制度」とは
今までの専門医制度は、各医師が所属する学会が独自に認定基準を設けていました。例えば、内科、外科、小児科、産婦人科、泌尿器科、形成外科、眼科という7ジャンルの専門医以外に、血液や消化器など部位ごとの専門医や、漢方、レーザーという治療方法の特異性による専門医など、計49の専門医がそれぞれ選ばれてきました。
このようなばらばらの基準で専門医が選ばれるのではなく、ひとつの機関の統一された基準で専門医を認定していく目的で新専門医制度が始まります。そして、中立的な第三者機関として「日本専門医機構」が評価や認定を行うことになりました。
基本領域とサブスペシャリティ領域とは
2018年度から開始する新専門医制度の特徴としてサブスペシャリティ領域というものがあります。19の基本領域で専門医を取得した医師が、その基本領域と関連のある領域でより高い専門性を身につけられるシステムとなります。つまり、専門医が2段階に分かれていると考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、基本領域で内科専門医となった医師は「腎臓専門医」や「消化器専門医」など、より特化した専門医となることができるのです。19の基本領域に対して、29のサブスペシャリティ領域が設けられていますので、次を参考にしてみてください。
基本領域
総合内科・小児科・皮膚科・精神科・外科・整形外科・産婦人科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・脳神経外科・放射線科・麻酔科・病理・臨床検査・救急科・形成外科・リハビリテーション科・総合診療科
サブスペシャリティ領域
消化器・循環器・呼吸器・血液・神経内科・老年病・腎臓病・肝臓病・糖尿病・内分泌代謝・リウマチ・アレルギー・感染症・消化器外科・心臓血管外科・小児外科・呼吸器外科・小児循環器・小児神経・小児血液、がん・周産期・婦人科腫瘍・生殖医療・脊椎脊髄外科・手外科・頭頸部がん・放射線治療・放射線診断・集中治療
総合診療科専門医とサブスペシャリティの問題とは
新専門医制度の開始前から懸念されている問題があります。それは「総合診療科専門医」のサブスペシャリティ領域が、今の段階では設けられていないということです。
総合診療科は、地域医療やプライマリケアを担う診療科ですので、一般的な利用者が最も多いと考えられます。総合診療科専門医が地域の病院やクリニックで患者の診察を行い、主訴や症状、検査などから判断し、より専門的な治療が必要な患者であればその診療科のある病院や専門医を紹介する仕組みとなります。
そう考えると、その医師の数は一定数必ず確保しておきたいはずなのですが、サブスペシャリティ領域が用意されていないことから、ステップアップができないのではないかという懸念を持つ医師も多いといわれています。また、その不安から総合診療科専門医を最初から選択しない医師も出てくるのではないかという問題も討論されていますが、具体的な変更はまだ行われていません。
今までばらばらの認定水準にあった専門医が、第三者機関による評価で統一されることは医療機関を利用する側にとって安心です。ただ、総合診療科のサブスペシャリティ領域問題だけでなく、女性医師からは反対意見の多い制度であることも気になります。学会出席や大病院での研修が必要となるサブスペシャリティ領域での後期研修は、女性が出産や子育てと両立しにくいものだといえるでしょう。医師不足が問題となっている現在、女性医師が職場を離れなければ子育てができないという現状の改善が強く望まれます。