政府が推し進めている「働き方改革」は、労働人口の減少に対応するため、現在の働き方の課題に対応していこうというもの。
医療の高度化や患者のニーズの拡大を受けて、医師は長時間労働が常態化しています。
また高齢化で患者の数の増加が予想されるのに対し、医師の数は一気に増やすことができないため、働き方の見直しは必須です。
医師の働き方改革で検討されている内容や、現時点ではどうなっているのかご紹介しましょう。
医師にも働き方改革が求められる理由
2015年の国勢調査で、日本の人口が初めて減少に転じました。
総務省の試算によると労働人口は2060年には2016年の約4割にまで減ることがわかっており、働き手が減少する中で成長を続けていくためには「働き手を増やす」「出生率を上げる」「生産性の向上」という対策が必要です。
そのためには「長時間労働」「正規・非正間の格差」「働き手不足」という3つの課題をクリアしなくてはいけません。
医師も働き手不足が予想されているため働き方改革が求められますが、他の職業と仕事の内容が異なるため医師ならではの対策が求められています。
医師の働き方改革は厚生労働省に設置された「医師の働き方改革に関する検討会」によって進められており、2019年3月に結論を出すことになっています。
日本救急医学会、日本医師会などでも働き方改革への意見を取りまとめて検討会に提示する予定です。
働き方改革ではどういう点が見直される?
現在の医師の働き方で特に問題視されているのが、長時間労働です。
労働政策・研修機構の調査によると、外科、救急科などオンコールが多い診療科ほど拘束時間が長くなっていることがわかっています。
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しかし医師の仕事は他の職業と内容が異なるため、一概に労働時間の上限を定めることが難しくもあります。
そこで検討会では雇用する病院側に労働時間を適正に管理すること、医師の業務を看護師などに移すタスク・シフト、他の医師と分担するタスク・シェアリングを推進し、医師の負担削減を図っていくことを決定しました。
さらに、女性医師支援として時短勤務や人材バンク、復職支援などを導入し、女性医師が安心して出産・育児できる仕組み作りも行われます。
いつから働き方改革が行われるの?
2019年には労基法が改正され、一般企業においては労働時間の上限は遅くとも2020年から、正規・非正規の格差是正のための同一労働同一賃金は2021年から適用開始です。
しかし、医師の労働時間に関しては「診療科によって対応に必要な時間が異なる」「労働と自己研鑽の線引きが難しい」などの課題があり一律に上限を設ければいいというものではないため、改正法の適用を5年遅らせることが決定済みです。
検討会による働き方改革の最終的な結論は2018年度末の予定ですが、労働時間の上限以外の対策に関しては結論を待たずに打ち出されることになっています。
医師の働き方改革のポイントは「医師のストレス軽減」です。
労働時間の上限については見送られましたが、タスク・シフト、タスク・シェアリングを取り入れて業務軽減を図るほか、36協定の見直しや病院側の勤務時間の管理の徹底、時短勤務の導入などは検討会の結論を待たずに導入されます。
女性医師のニーズにも柔軟に対応できる仕組みが整っていくので、より働きやすくなると言えるでしょう。