医師の給与にインセンティブ手当を導入する動きが活発になっています。
医師のモチベーションアップや定着率の向上などを目的に導入されますが、医療が利益目的に走ることを促進するのではないかという危惧もあります。
今回は、主なインセンティブ
手当2種類と、具体的な支給要件や導入時の課題についてお伝えします。
医師のインセンティブ手当は主に2種類
2011年、佐賀大学医学部附属病院で外科医にインセンティブ手当が支給されるようになったことをきっかけに、近年では医師の給与にインセンティブ手当を支給する動きが活発になりつつあります。
医師のインセンティブ手当には主に2種類です。
・経済的インセンティブ:個人の実績が給与に反映されるインセンティブ
・自己実現的インセンティブ:医師のスキルアップや成長につながるインセンティブ
経済的インセンティブはその名のとおり、外来患者数や手技料、時間外緊急勤務の実績に応じて支払われる金銭的インセンティブです。
自己実現的インセンティブは、専門医の取得や学会で発表する論文執筆のサポートなどを指します。
日ごろの頑張りが金額や研究サポートという目に見える形で表されるため、インセンティブ手当は医師のモチベーション向上や離職率の抑制というメリットがあります。
インセンティブ手当の導入例
佐賀大の例ではリスクを伴う手技料(手術等)の5%が医師に支給され、外科医が注目されがちですが、内視鏡術やカテーテル挿入術、血管造影等も支給対象となっています
時間外緊急診療やドクターカー搭乗、災害派遣も対象です。
このほか、インセンティブ手当を導入している病院の場合、外来患者数に応じた手当や分娩数、高度な手技が求められる処置や手術を行った場合に支給するという基準が設けられていることが多いといえます。
経済的インセンティブ手当では、手当支給の基準に明確さが求められるため、このように分かりやすく数値化できることが条件になっています。
課題も多いインセンティブ手当
その一方で、医療に市場原理を持ち込むべきでないという議論があり、インセンティブ目当てに不必要な検査などで診療報酬を稼ぐ医師や、人数をこなすために患者ひとりひとりの診察にかける時間が短くなるのではないかという懸念があることも事実です。困難な治療を要する患者が置き去りにされるようなことや、研究や人材教育に割く時間がおろそかにされてもいけません。
インセンティブ手当はモチベーション向上などの目的で導入されます。
頑張っても報われない給与体系ではモチベーションが上がりませんが、その一方で制度が適正に運用されるように注意を払うことも必要となります。
診療科によって、インセンティブを導入しやすい、しにくいの特徴があるでしょう。
医師の働きは給与だけで評価されるわけではありませんが、頑張りが給与に反映されることを喜ばない医師はおそらくいないでしょう。
前述の佐賀大では、ユニークなところで教育支援、勤務軽減を受ける女性医師の業務を分担した若手医師に支給される手当などもあります。
今後はそのような、医師個人ではなく医療全体に寄与する業務が評価される仕組み作りが期待されます。