【海外で活躍する女性医師を訪ねて ~医大生英国探訪記~】
<宗像恭子先生インタビュー>
ロンドンで過ごす最後の夜。University of LondonのKing`s Collegeの医学部をご卒業され、現在ロンドンで勤務医として活躍されている宗像先生にお話を伺った。
「メンタルケアを重視した医学教育」
先生が学生時代を過ごされたGuy`s Campusの校内を案内していただきながら、当時のお話を伺いました。イギリスの医学部は5年制で、1学年400名だそうです。医学部の数が少ないためでしょうか、日本に比べて随分多いです。驚いたのは、女子生徒がそのうちのなんと60%を占めるということです。日本では、女子生徒の著しい増加が見られますが、それでも男子生徒数を上回ることはないのが現状です。
5年間のうち、はじめの2年では、心理学や精神論などを含めたメンタルケアについての比重が大きい講義を受け、残り3年間で臨床実習と勉強を並行させて行うとのことでした。そして、イギリスでは卒業試験=国家試験で、5年生の終了時に受験する卒業試験をクリアすると医師として認められるそうです。医療行為そのものには大きな違いはないはず、にもかかわらず医師になるまでの過程や、医療を取り巻く環境の違いには驚きばかりでした。
「平等であること、それは必ずしも男性医師=女性医師ではない」
仕事とプライベートをはっきり区別させることに対する意識と女性が医師として働くということに対する男性医師の理解が、イギリスで女医さんが離職することなく医師として働き続けることのできる1つの理由ではないか。イギリスで医学を学び、勤務されている先生の話からはそのような印象を受けた。
性差を感じることなく、平等に働くことはとても理想的なことです。しかし、平等であるということは、男性=女性と考えることではありません。やはり、性差がある以上、少なからず違いはあります。しかし、それは決して悪いことではなく当然のことです。医師という仕事に限らず、イギリスで多くの女性が職場を離れることなく子育てをしながら仕事を続けられているのは、男性も女性という立場を理解し、女性も男性という立場を理解し、男性と女性の違いと当然のように認め、お互いがお互いを尊敬し合っているからではないでしょうか。 昨今、日本では女性医師の復職支援やサポート体制が整いつつあり、ますます意欲的な女性医師が増えていくことが予想されます。この意欲が、熱意が、同僚となる医師にも伝わりよりよい医療を築き上げることを願います。
先生は東京の病院での研修経験もあるとのこと。日本とイギリス実際の医療行為に違いはあるのか聞いてみました。まず大きな違いは‘食’。なんとイギリスの病院では心筋梗塞で入院されている患者さんに病院食としてFish and Chipsを出すそうです。食の欧米化が医療の世界でも問題となっている日本と異なり、イギリスでは食生活の改善という考え方がないそうです。病気を治したいのかどうなのか…。このあたりは少し理解に苦しみます。そして‘衣’。医師はあまり白衣を着ることがないそうです。イギリスの女医さんStyleはというと、モノトーンカラーが多いそうですが、パンツスタイルやワンピースなど様々で、聴診器や本やペンを入れた小さなポシェットをも持ち歩く医師も多いとか。中にはChanelのスーツにピンヒールを履いて診察を行うドクターもいらっしゃるそうです!さすが、ロンドンっ子。
【イギリス勤務事情】
イギリスには、大きく分けて2つの勤務体系があります。
そのうちのひとつをGP(General Practice;家庭医)といい、こちらは定刻で帰ることができる等と女性が働きやすい勤務体系です。他方は専門医で、卒後Consultantとして7年間の研修を受けキャリアを積んでいくタイプです。仮にこの研修期間に離職をせざるを得なければならなくなった場合、また一からのスタートとなります。つまり、後者の勤務体系を選択する女性のほとんどは、この間に結婚・出産をすることはないとのことでした。ここまででは、後者の勤務体系はあまりにも厳しいいばらの道のようですが、研修7年間の後にはwork sharing(二人で一つの仕事をする)ことも可能となり、フレキシブルに時間を使い、定刻で帰宅することも可能だそうです。
<あとがき>
‘行動力の重要性’
一歩思い切って足を踏み出せば驚くほど世界は広がります。一歩足を踏み出すためには、勇気とエネルギーが必要です。その一歩踏み出すという行為を億劫に感じられてしまうような時には、今回、出会うことができた3人の女性医師との出会いを思い出し、思い切り良く前に進んでいきたい。
執筆者:東京女子医科大学4年:永井阿貴、佐藤由利子
※記事提供元:「海外で活躍する女性医師を訪ねて~医大生英国探訪記~」