【海外で活躍する女性医師を訪ねて ~医大生英国探訪記~】
大学生活も半分が過ぎようとしている。残りの学生生活をどのように過ごすのか、そして自分の将来はどうなっていくのだろう。-ふと、入学して間もない頃に先輩から教えてもらったある法則が頭をよぎった。
「3分の1の法則」
-3分の1は幸せな結婚、3分の1は離婚、3分の1は未婚。-
医師になること、それはまだまだ遠い未来のことだと思っていた。しかし、その時は刻一刻とせまっている。そしていつか、私にも必ず選択の時がくるはずなのだ。医師としてのキャリアをとるのか、女性としての人生をとるのか、両立は難しいのか。将来に対して、あらゆる可能性に期待する気持ちと、不安や多くの疑問を抱き始めた頃、海外の医療事情についての講義を思い出した。
・ 日本 2.1人/1000人(女性医師 14.3%)、
・ イギリス 2.5人/1000人(女性医師36.7%)
イギリスは、人口当たりの医師数を日本とほぼ等しいにも関わらず、女性医師の占める割合が日本よりはるかに大きい。さらに注目すべきことは、日本で問題となっているような30代から40代の女性医師の結婚・出産による離職がイギリスではあまりみられないということだ。
日本でもイギリスでも、女性医師の置かれる立場は同じはずである。それにもかかわらず、こんなにも違いが生まれるのはなぜだろう?もしかしたらイギリスにはこの不安や疑問を解決するヒントがあるのでは?!私たちはロンドンのロンドン医療センターで活躍する伊勢田知子先生にインタビューする機会に恵まれた。
<ロンドン医療センター(伊勢田知子先生インタビュー)>
■医師-患者間、イギリスは日本よりもドライ
ドライな関係。その響きは、冷たい人間関係を想像させ、あまり良い響きではない。
しかし、伊勢田先生のお話を伺うと、一概にはそのように言えないのではないかと思った。
日本では、患者さんのために身を粉にして働くことをだれも言わないにしても、どこかで求められているようなところがある。つまり、医師-患者間は非常に密であり、そこに医師のプライベートを尊重する余裕はない。一方、イギリスでは‘医師は数ある職業の中のひとつに過ぎない。’という考え方が一般的である。そのため、残業等を強いられることもあまりなく、プライベートの時間を確保することができるとのことであった。医師である以前に、人であり、女性である。この当たり前の事実を、皆が受け止めるというだけで労働体系ががらりと変わるのである。うまく仕事と生活を両立するためには、ひとりよがりではどうにもならない。多くの人の理解と協力が必要であることを改めて感じた。
■20代はとにかくがむしゃらにがんばりなさい。
医師として働くということ、病院の中の一員として働くということ、そのような環境の中でいろいろな葛藤や他者からの抵抗を感じ、行動を躊躇することがあるかもしれない。でも、とくに若いときには、そこで遠慮せずにあきらめずに自分の志を信じて一生懸命取り組むこと。そうすることで、その先が開けてくるはず。伊勢田先生が私たち(学生)に送ってくださったメッセージです。
今目の前にあることをこなしつつも、ときには焦らず立ち止まって自分自身と向き合おう。そして、自分が興味を持ったことはとにかく一歩足を踏み出してチャレンジして、自分の世界を広げ、いざという時のための行動力と決断力を身に付けられるように、残された学生生活を積極的に過ごそうと決意を新たにした。
執筆者:東京女子医科大学4年:永井阿貴、佐藤由利子
※記事掲載元:「海外で活躍する女性医師を訪ねて~医大生英国探訪記~」