米国のコロンビア大学は、米脳神経科学誌ニューロン(Neuron)にて、自閉症の患者の脳には神経細胞同士をつなぐシナプスが過剰に存在しており、この度マウスを用いた薬剤投与実験でシナプスの刈り込み(古くなり劣化した細胞を廃棄する)メカニズムを回復させることに成功したことを発表した。
(参照:統合失調症治療に新たな希望 108個の遺伝子を特定)
Photo:Synapse By gasboyben
政府推計によると、米国では68人に1人の子どもが自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されており、日本でも100人に1人程度の割合で診断されていると言われている。コロンビア大学の研究チームは、遺伝子組み換えにより自閉症を再現したマウスによる実験にて、「mTOR」の働きを抑える「ラパマイシン」と呼ばれるたんぱく質を投与。「mTOR」はシナプスの刈り込み能力を阻害する。ラパマイシン投与を受けたマウスは、他のマウスとの接触を避けるなどの自閉症的な行動に減少傾向がみられた。
同大学の神経生物学者、デビッド・スルザー氏は、診断後での有効な治療が行えるとして話しており、自閉症治療に大きな期待が高まっている。