国境なき医師団らは先月25日、シドニー市内で環太平洋連携協定(TPP)に反対するための抗議集会を開いた。TPP交渉参加によって日本でも混合診療が全面解禁される恐れがあり、医療の質の低下につながるなどの懸念の声も上がっている。
(参照:混合診療の拡大 平成28年度から実施)
Photo:doctor_waku_seeing_patients By WWF Climate
日本では、健康保険が適用される保険診療と、適用されない自由診療を同時に使う「混合診療」は原則的に禁止されている。現在、健康保険制度では患者は1〜3割程度の自己負担で保険対象の治療を受けることができる。しかし、TPP交渉参加によって混合診療が全面解禁されると、患者の負担が増え、治療や医薬品の有効性や安全性が危ぶまれるといった懸念の声が上がっている。日本医師会の横倉義武会長も、日本が誇る国民皆保険を守るため、混合診療の全面解禁に強い反対姿勢を見せている。
現在、「難病治療のために最新の治療や医薬品を試したい」などといった患者のニーズにも合わせ、保険適用には至っていない先進的な治療や医薬品と保険診療との併用を認める「先進医療」が導入されており、すでに部分的に混合診療は可能となっている。ここで支払う保険外の治療費は保険適用までの一時的なもので、安全性や有効性が認められれば保険内となり、最終的には自己負担が少なく済むのである。
しかし混合診療が全面解禁になると「保険外診療は保険外診療」とみなされ、先進医療と認められることなく永久的に保険が適用されなくなるということが考えられる。混合医療全面解禁後の医療制度を長期的に見ると、富裕層でない限りは多くの患者にとって負担となりうるだろう。