広島大学は先月10日、共同研究で早老症の一種ウェルナー症候群の患者の線維芽細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を樹立することに成功した。今回の研究成果は米電子版科学誌プロスワンに掲載された。
(参照:iPS細胞による網膜細胞移植 2例目は来年夏にも実施)
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ウェルナー症候群は一般の人よりも速いスピードで年をとり、20代で白髪やしわ、視力の低下といった老化症状のほか、骨粗鬆症、不妊、動脈硬化などを引き起こす早期老化症であり、患者の平均寿命は40~50歳と言われている。日本人に多い病気で、国内だけでも2000人以上の患者がいると推定されている。有効な治療法はなく、8番目の染色体にある遺伝子の突然変異を両親から受け継ぐとウェルナー症候群になるとされる。突然変異により、遺伝子が生成するDNAヘリカーゼという酵素の働きが阻害されてしまいDNAに傷がついてしまうのが急速な老化の原因と考えられている。
今回、広島大学が共同で樹立したiPS細胞は、患者から皮膚細胞を採取。このiPS細胞から細胞を作製すると早老症の特徴がみられた。同大学の嶋本顕准教授は「ウェルナー症候群」の治療薬開発や応用研究に進めたいと話している。