2010年8月6日、厚生労働省に入省した元女性キャリア元医系技官、村重直子さんによる『さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?』が講談社より発刊された。わが国は、医療面で幾多の問題をかかえる。医師不足、看護師不足、新型ウイルス、高齢者医療など問題は山積みだ。国民がどこまで真実を知らされているのか? 日米の病院で医師として経験 を積み著書がその問題をえぐっている。
著者の村重さんはで、2005に厚労省に医系技官として入省。2010年3月に退職するまで、医療の「現場」の問題を行政の中で生かすべく活躍していた。前政権時代、舛添要一大臣直属の厚労省改革準備室(のちの改革推進室に昇格)で勤務したこともある。
官僚に支配されている医療の赤裸々な実態が彼女の著書で明らかとなっている。医系技官は医師免許を持つのだが、その実務経験不足から来る現場との問題意識の乖離が大きい。国民の健康よりも自分たちの都合を優先させるペーパードクターぶりを告発している。更に事務分野の官僚に至っては、その当事者意識の温度差は更にひらいているという。そのようなエリートが日本の医療行政の指揮をとっていることに、重村さんは警鐘を鳴らしている。
現場の問題点の解決方法に対する、組織内の意思決定プロセスの問題は、医療行政においても大きな問題を抱えているようである。村重さんは、医療現場に関わる官僚の意思決定に関わる問題の本質的原因に対する知的好奇心から入省したが、その世界は想像以上のものであったようだ。