京都大学iPS細胞研究所の研究グループは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った軟骨組織を動物に移植し、ガラス軟骨の作製に成功したこと発表した。論文は27日、科学誌ステムセル・リポーツ電子版に掲載された。
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iPS細胞を使った再生医療は、さまざまな疾患の治療のために研究が進められている。昨年9月にはiPS細胞から作った網膜の細胞の移植が行われ、iPS細胞から作った神経細胞を使ったパーキンソン病治療は2018年にも治験が行われる予定である。
膝や肘などの関節軟骨は、加齢や事故などで破損してももとに戻ることはない。これまで患者自身の健康な軟骨を培養して移植する方法はあったが、痛みが再発してしまうなどといった課題も多かった。しかし今回、それらの問題点をカバーするiPS細胞を使った新たな治療法開発が報告された。京都大学iPS細胞研究所の妻木範行教授ら研究グループは、iPS細胞を軟骨細胞に変化させ、軟骨組織の塊を作製。ラットやミニブタに移植したところ患部に生着し成功を確認することができた。この結果から妻木教授らは、今後は安全性と有効性の確認を十分に行いつつ、2019年をめどに臨床手術実施を目指すと述べている。