仕事を持つ母親にとって、仕事に復帰する際の子供の預け先確保は大きな懸念材料です。
待機児童が多いエリアでは、保育所が見つからずに仕事復帰をあきらめる女性もいるほど事態は深刻になってきています。
これは働く女性全てに共通する問題ですが、特に産後の職場復帰が難しいとされる女性医師ではどうなのでしょうか?
そこで今回は、女性医師ならではの保育施設探しの問題点についてご紹介します。
保育施設のある病院探しの問題点
保育施設を持つ企業が増えている昨今は、医療機関においても保育施設を設置するところが多くなってきています。
特にこの10年での増加率は顕著で、現在では約半数の医療機関に院内保育施設が設置されていると言われています。
これには近年の女性医師の増加も関わっており、2014年末の時点で女性医師の数は約5,700人。
医師全体で女性が占める割合は19.6%と毎年1,500人~2,000人ずつ増加しており、これからも女性医師は増えていく見込みです。
女性医師の増加を受けて2009年に日本医師会が女性医師に対し行ったアンケートによると、「託児所・保育園などの整備・拡充(64.8%)」、「人員(医師)の増員(62.3%)」「宿直・日直の免除(62.0%)」など、育児・保育への支援や制度の充実を求める声が多く聞かれました。
このため院内保育施設も増加傾向にあるのですが、院内保育施設を設置している病院は比較的規模の大きい病院や郊外にある病院に多く、アクセスのよい都心部の病院には少ないという傾向があります。
待機児童問題
妊娠・出産に際して一度退職、あるいは非常勤を選ばざるを得ない女性医師にとって、待機児童問題は仕事復帰への大きな壁となっています。
保育所はフルタイム勤務で仕事復帰が決定している母親が優先されるため、医師であっても前年に勤務実績がない場合は優先度が低く、なかなか保育所に子供を預けられません。
4月に入所申込みをする場合の入所の優先順位は、前年11月の勤務実績が反映されます。
常勤として育児休暇を利用している場合は勤務実績ありということで優先順位が高くなりますが、退職中はもちろん、非常勤の場合でも優先度が低くなるのです。
仮に保育所に預けることができても、常勤から非常勤になった場合は退園勧告を受けることもあります。
院内保育施設の利用条件
保育施設を持つ病院が全体の約半数に上る一方、院内保育施設の利用率は33.8%に留まっています。
院内保育施設の5割以上で土日の保育に対応しており、さらに24時間保育、一時的な緊急保育、病児保育に対応しているところもあるにも関わらず、一体なぜなのでしょうか。
実は、「常勤でないと利用できない」「当直、オンコール前提」といった利用条件がある施設も多いのです。
そのため、子供を持つ女性医師の9割近くが保育所や未認可の託児所といった外部の保育施設を利用しており、予定外に保育が必要になった場合は「親、配偶者などの親族の誰かに預ける」が最多で、欠勤するとした回答も3割程度あり、緊急時の子供の預け先に苦慮していることがうかがえます。
このように、保育施設の確保に関しては、医師ならではの問題も発生します。
復帰直後だけでなく今後の勤務時間や働き方の変化なども考慮して、自分にとってベストな選択をすることが大切です。