医師の言葉や態度が患者を傷つける“ドクターハラスメント”は、医師と患者の間で起こりやすいトラブルの一つです。中には訴訟に発展してしまうこともあり、医師としては気をつけたいトラブルといえます。
そこで、ドクターハラスメントを防ぐための対策についてご紹介します。
ドクターハラスメントとはどんなもの?
ドクターハラスメントとは、患者を傷つけてしまう医療従事者の言動のこと。言葉にはドクターとついていますが、医師だけでなく看護師など医療従事者全体の言動を指します。
具体的には患者の心を傷つける発言のほか、収益を最優先させて不要な治療や保険適用外の治療を他に選択肢がないよう思わせてすすめたり、子どもの状態の悪さを親のせいにする発言などもドクターハラスメントに当てはまります。
ドクターハラスメントは患者の受け止め方次第である上、被害者が加害者に対し直接行動を起こすことはほとんどないため、問題は表面化しにくいのですが、表面化した時には訴訟など大事に至る可能性があります。
なぜ起こる? 医師がドクターハラスメントをしてしまう原因
東京都が設置している「患者の声相談窓口」に寄せられた意見のうち、約7割は患者側にも何かしらの問題が考えられる一方、残り3割には患者に落ち度はなく医療機関の対応に問題があると分析されました。(2014年東京都福祉保健局調べ)
このことからドクターハラスメントは、「患者とのコミュニケーションがうまくいっていない時に発生しやすい」といえます。
その理由として「患者は医師の言うことをおとなしく聞いていれば良い」という考えが根強い世代や地域では、丁寧な説明を求める患者に対し医師がカチンときやすい、ということが挙げられます。
また、現在は患者自身の利権意識が強まっており、医師や病院スタッフに悪質な要求やクレームをつける患者が増加傾向にあるのも原因の一つです。
ドクターハラスメントを防ぐために患者とのコミュニケーションで注意したい点
ドクターハラスメントを防ぐには「医師と患者は対等な立場である」ということを心得ておくことが大切です。
実際の立ち位置で言えば、患者は健康問題を抱え、専門知識もないので医療機関を頼らざるを得ない弱者ですから対等ではありません。そのため、医師自身が視線を下げる必要があるのです。患者に不安や不満を与えるような言動はなるべく出さないように心掛けましょう。
具体的には「患者のほうを向いて挨拶や話をする」「治療を急かさない」「説明なしに検査をしない」「専門用語を使わない」「医師としての実績を自慢しない」などです。
また組織のトップが横柄な態度を取っていると、その下のスタッフも外部から来る人に対して横柄な態度を取りがちです。ドクターハラスメントは医師だけでなく看護師やその他のスタッフの態度も含まれているので、医師自らが横柄な態度を取らないように心掛けることもドクターハラスメント予防には欠かせません。
ドクターハラスメントは表面化しにくい問題ですが、表面化すると大事に至る可能性がある怖い問題です。ドクターハラスメントを防ぐために医師自身が冷静さを失わないこと、病院スタッフへの態度にも気をつけることが重要となってきます。