過労死や長時間労働などからくるメンタルヘルス不調の話題を耳にすることが多くなり、国を挙げての「働き方改革」が進められる中、産業医への注目が高まっています。厚生労働省の調査によると、2016年3月時点で産業医の数は約9万人です。それに対し、産業医を選任する義務のある50人以上の規模の事業所数は全国で約16万5千と、産業医が不足していることが分かります。このように今後も需要の増加が見込まれる産業医について、資格取得に必要な条件をご紹介します。
産業医の要件
日本医師会によると、産業医に必要な要件は労働安全衛生規則第14条第2項で次のように定められています。
1.厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
2.産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
4.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
5.その他厚生労働大臣が定める者
産業医の資格を取得するには
産業医になるために必要な資格は、日本医師会認定産業医です。研修を受講する場合、1時間を1単位として、所定のカリキュラムに基づく産業医学基礎研修を50単位以上修了する必要があります。資格は研修終了後に日本医師会に申請します。認定期間は5年間で、更新には産業医学生涯研修を20単位取得しなければなりません。
日本医師会の研修を受ける
産業医の要件1に該当します。日本医師会および都道府県医師会が実施します。実施時期や期間などは実施する医師会によって異なりますので、ご確認ください。
産業医科大学の研修を受ける
産業医の要件1に該当します。6日間で50単位を取得する夏季集中講座です。東京で講座が開かれることもあります。
労働衛生コンサルタント試験に合格する
産業医の要件3に該当します。労働衛生コンサルタント試験に保健衛生区分で合格することが必要です。試験は筆記と口頭により行われ、医師は筆記試験の一部免除を受けることができます。日本医師会の「産業医学講習会」もしくは産業医科大学の「産業医学基本講座」を受講した医師は、筆記試験が全て免除されます。
産業医研修の詳細について
産業医研修についての詳細は、次のホームページからご確認ください。日本医師会雑誌や各都道府県の医師会会報などにも情報が掲載されます。
・日本医師会:http://jmaqc.jp/sang/index.php
・各都道府県医師会:http://www.med.or.jp/link/search.html
・産業医科大学:http://www.uoeh-u.ac.jp/index.html
・産業医学振興財団:http://www.zsisz.or.jp/
日本医師会もしくは産業医科大学による所定の研修を受けることや、労働衛生コンサルタントの保健衛生区分で合格することなどによって、日本医師会認定産業医の資格を取得することができます。産業医になるためのコースは複数用意されていますので、適切なものを選択しましょう。「働き方改革」の追い風を受けて、産業医の需要はこれからますます高まることが見込まれます。