麻酔科への転科を考える医師は多いといわれています。
女性医師の場合は特に、結婚や妊娠、出産、子育てなどのライフイベントがきっかけで働き方を見つめ直すことが多いです。
たくさんの診療科がある中で、麻酔科の人気が高い理由は何なのでしょうか?
麻酔科に転科することのメリットとデメリットにも触れ、転科をお考えの女性医師に考えておいていただきたいポイントをご紹介します。
女性医師の活躍が目立つ麻酔科
平成28年の三師調査(※)によると、医師の総数は約30万5千人で、そのうち女性医師の数は約6万4千人と全体の21%を占めています。
診療科別にみると麻酔科の医師は9162人で、そのうちの約40%が女性医師と全体よりも20%も高く、麻酔科では女性医師が活躍していることが分かります。
平均年齢は44.0歳です。
深刻な麻酔科医不足を受けて、女性医師が働きやすい環境作りがなされてきたことや、周術期を支える麻酔科医の果たす役割が患者の安全性確保に貢献していると評価が高まってきていること、いわゆる「ベッドフリー」で主治医になることがないこと、関係する分野が広いことから転科が受け入れられやすいことなどが、転科も含めた麻酔科医増加の理由として考えられます。
※厚生労働省 医師・歯科医師・薬剤師調査(平成28年度)
麻酔科は今もニーズ高、転科は年収アップにつながりやすい
日本麻酔科医学会によると麻酔科医は年々増加を続けており、平成23年には学会の会員数は1万1千人を超え、認定病院数は約1200ヵ所にまで達しました。
それでも麻酔科医の需要が高い理由は、麻酔科医の人数は増加しているものの、需要の増加がそれを上回っているからです。
患者の安全性確保の点から、特に全身麻酔で専門知識と技術、経験を持つ麻酔科医が求められることや、超高齢化社会で難しい手術の増加が予想されること、手術だけではなく麻酔科医が求められる分野が集中治療、緩和ケア、ペインクリニックなど幅広い領域にわたることなどから需要がますます高まっています。そして今後もこの傾向は続く見込みです。
供給が需要を上回っているため、転科をする場合は経済的に優遇されるといえます。
転科には十分な検討と準備を
麻酔科に転科するメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリットは、給与水準が他の診療科に比べて高いことです。
ニーズが高いにもかかわらず人材不足のため、非常勤やアルバイトの募集が多く、働き方を選びやすいこともそのひとつです。
麻酔は手術の基盤なので関係する領域が多いことに加え、ICUや緩和ケア、ペインクリニックなどもあり、どこに特化していくかという選択肢が多いこともそのひとつでしょう。
麻酔科へのそして麻酔科からの転科も受け入れられやすいといえます。予定手術だけの病院を選べば、家事や子育てとの両立も夢ではありません。
主に手術に臨む患者の生体管理が業務ですから、精神的な負担は軽くはありません。
緊張や集中を強いられるので、一生続けられるかという問題もあります。麻酔科医は、標榜医、認定医、専門医、指導医とありますが、標榜するにも日本麻酔科学会の認定条件があり、それをクリアする必要があります。麻酔科医の技術の個人差が大きいという話もあり、経験を積んだ医師が求められているといえるでしょう。
女性医師は、結婚や出産、子育てなどのライフイベントで働き方を変える必要に迫られることがあり、そこを見据えて転科や転職を具体的に考える場合が多いでしょう。
医師全体が不足している中でも特に麻酔科は需要が高いこともあり、転科しやすい状況にあります。
QOL、収入、仕事のやりがいなど、何を優先するのか自分の中でしっかりと答えを出し、後悔のない転科をしてください。