【医学部志望動機を高めるために PartⅠ】
職業柄、息子や娘を医師にしたいと思っている親御さんからの相談を受けることが多いのだが、中でも、こどもの動機付けに悩んでいるとの相談がダントツである。
特に中学3年生から高校1年生くらいの子弟を持つ(医師である)親にとって進路決定の問題は重大である。男の子の場合、父親の職業に最も関心を持っているのが当たり前であるのだが、何せ反抗期の末期、素直で従順な子など珍しい。元気でやんちゃな男の子は簡単に親の希望通り医学部を志望してくれないことが多いのではなかろうか。
こどもの立場としては、医師という仕事が有意義でかつ自分にも目指す環境が整っていることは重々承知であるのだが、親と同じ道を歩むとなると将来もずっと干渉され続けることになりそうだし、いつまで経っても親に頭が上がらないのも面白くない。あまりに立派な親だと引いてしまうし、かといっていい加減な態度で仕事をしていると思われたら完全に嫌われてしまいそうである。
一方、母親が医師の場合、幼い頃の記憶として十分に面倒を見てもらえなかった(「手間をかけたお母さんの味? そんなの食べたことない!」なんて言われたこともあるでしょう)とか、一緒に遊んでもらう時間がなかったなどを理由に、女の子は、自分の子にはそんな寂しい思いはさせたくないとか、男の子も医者は忙しすぎで家庭が犠牲になることを理由に将来の職の選択肢から医師を外すことを考えるのかもしれない。
幼い子どもにとって勉強することの意味とは?
医学部を目指すことを躊躇またはそれに抵抗する最大の原因は、なんと言っても医学部入試が難しいからである。
どうしても子どもは楽な方に流れていく。勉強が好きな子どもは少ないし、他にたくさんの一見魅力的な職業はある。その観点から言わせてもらえば、小学校低学年から優等生に育てておくことが最も効果的な動機付けとなる。出来のよい子であれば精神的に大人になってから(高校2年くらいか)じっくりと医学部に進学することを説得すればよい。
とは言え、なかなか思うように優等生には育ってくれないのが世の常。どこの親も子どもの成績での悩みが多いのではなかろうか。そもそも幼い子どもにとって勉強することの意味は、将来の夢や有利性を考慮しての結論ではないはずだ。親や先生に褒められるとか、友だちから尊敬されたり異性にモテるからといった低次元ではあるが本能的な動機だったり、または稀にであはるが純粋に学ぶ喜びを見いだしたからだったりであろう。
もしかしたら勉強に対する意識は薄いのに自然に優等生になっていたなどという能力に恵まれた子もいるかもしれないが。
筆者紹介
七沢英文(ななさわ・ひでふみ)
中央大学法学部卒 塾講師、家庭教師などを経験。
1997年より医学部受験専門予備校YMS講師、現在YMS取締役兼同機関誌「Lattice」編集長。
NPO法人「ジャパンハート」理事。
趣味:オートバイ、車、写真、映画鑑賞、麻雀、料理、旅行など (しかし、現在まったくできない状況、泣!)
※記事掲載元:「医学部志望動機を高めるために PartⅠ」(閲覧には会員登録が必要です)