今年9月、獨協医科大学越谷病院こころの診療科教 井原裕氏が『生活習慣病としてのうつ病』(日本評論社)を上梓した。「薬に頼らない治療」を掲げて日々多くのうつ病患者に接する著者が顕した同書は、薬物治療に偏ったうつ病治療に警鐘を鳴らし、精神科医の臨床力アップの必要性を説く内容となっている。
(参照:日本うつ病学会が「第10回日本うつ病学会総会」開催を発表)
井原教授の差配する獨協医科大学越谷病院こころの診療科は、広大な埼玉県東部地域で唯一の総合病院精神科として、日々多くのうつ病患者の診療にあたっている。その現場で同氏が標榜するのは「薬に頼らない治療」。多くのうつ病は、睡眠不足やアルコールの過剰摂取による「生活習慣病」であるとし、生活習慣を糺すことで改善するというのが井原教授の主張だ。精神科医に対して、薬物を用いなくても治癒する患者にまで安易に薬物治療を施す「精神科医の薬物依存」からの脱却を提唱し、生活習慣の指導や簡易な精神療法によって治療できるようにスキルを磨くことを求める主張は、多いに耳を傾けるべきものだ。