震災、津波のあと
3月11日、東日本は未曾有の大災害に襲われ、近代以降の日本で最も大きな危機にさらされたと言っても過言ではないでしょう。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
私は、4月の半ばに気仙沼から三陸海岸沿いに南下し、石巻まで行って参りました。微力ながら手伝わせて頂いているNPO法人・ジャパンハートの被災地活動の様子を視察してきたのですが、津波の被害の大きさに全く言葉を失いました。
1995年の阪神大震災の直後、当時両親が住んでいた神戸市東灘区に被災の片付けの手伝いに行ったことがあり、その際神戸の惨状に大変なショックを受けた覚えがありますが、今回の東北太平洋岸の津波の被害はその比ではありません。津波に襲われた町や集落はあらゆるものを波にさらわれてしまい、そこには使えるものは何も残っていない。見渡す限りがれきの山です。あり得ない場所に船や漁業用の網などが置き去りにされています。道路はひび割れ、線路は無残にも引きちぎられています。ここからどうやって再建するのでしょうか。途方に暮れてしまいます。それでも震災から3ヶ月以上経ち、少しずつではありますが復興に向けて世の中が動き始めています。道路や水道・電気などライフラインは急速に復旧を遂げ、仮設住宅の建設も急ピッチで進んでいます。
仕事に復帰したり、新たに事業を始める人も出てきました。
その中で5月に、1ヶ月遅れで福島県立医科大学の入学式が行われたようです。
医師を志す新入生に向けた学長の名演説に秘められたものとは
1カ月遅れで行われた、福島県立医科大学菊地臣一学長の式辞がホームページに出ていますので是非ご覧ください。
http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/sikiji.html
大変勇気づけられると同時にこれから幾多の困難に立ち向かうべき覚悟が促される名演説だと思います。学長はまず、入学式が「未来に対する覚悟」を表明する場であることを確認します。そして、医療人としてのプロ意識:「目標に対する単純かつ強固な意志」、「低い水準における満足感の拒否」、「自らの努力なくして人生の果実を期待するな」を促し、同時に出会いを大切にすること、挫折に対し強くなることを求めます。
最後には学長自らの経験から得た3つの言葉:「愚直なる継続」、「修業とは矛盾に耐えること」、そして「誇り」を贈り、新入生を迎え入れました。それぞれの言葉のどれをとっても非常に真摯でありまた厳しくもあり、厳粛に受け止めなければいけない内容だと思います。
先人達は困難に直面した時、絶望したり運命を呪うことは賢くなく、その機会を自らを鍛える好機と捉えその困難を乗り越えることが大切である、と説いています。災害や戦争を繰り返し経験し、幾度となく挫折しかけてきた人間の歴史ですが、必ずやまた日常に活気が戻り、明るい将来を展望する希望と勇気がよみがえってくるのです。そして、「何のために学ぶのか」もこのことが基礎となって、新たな困難や苦悩を乗り越えるための智恵となり、大切なものを守る力となる、そのためのものだと思います。
七沢英文(ななさわ・ひでふみ)
中央大学法学部卒 塾講師、家庭教師などを経験。
1997年より医学部受験専門予備校YMS講師、現在YMS取締役兼同機関誌「Lattice」編集長。
NPO法人「ジャパンハート」理事。
趣味:オートバイ、車、写真、映画鑑賞、麻雀、料理、旅行など (しかし、現在まったくできない状況、泣!)
※記事掲載元:七沢塾~カリスマ講師直伝連載コラム~「震災、津波のあと」(閲覧には会員登録が必要です)