今年4月、米食品医薬品局(FDA)の諮問委は、子宮摘出手術に使用される電動式組織細切除去装置(モルセレーター)に子宮内の隠れたがんを拡散させる可能性があるとして本装置を使用しないよう勧告した。さらにコロンビア大学が今月22日に発表した調査結果によると、これまで予測されていたよりも多くの種類のがんを拡散させる可能性があることがわかっている。
(参照:医療従事者も抗がん剤曝露の危険 医師、看護師らが対策協議会を発足)
Photo: By Alejandra Mavroski
モルセレーターは管状の刃で細かく切ったり除去したりすることが可能な装置である。切開部分も小さくすむことから開腹手術よりも患者への負担は少ない。FDAの推計では、モルセレーターは子宮筋腫の除去手術でも年5万回使用されてきた。良性であることが多い子宮筋腫だが、女性368人に1人の割合で子宮がんが見つかり、モルセレーターの手術によりそれが拡散するリスクが高まるのである。今回の調査で、FDAの報告書どおりの水準でのがん拡散リスクが認められた。
モルセレーター最大手メーカーの米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、4月にFDA諮問委の勧告を受けてモルセレーターの販売を一時中止しているが、市場からの撤退にまでは踏み切っていない。FDAは年内にモルセレーターの使用を制限するか、使用禁止を促すかを決定する見込みである。