大阪府南部・泉南地域の工場の元労働者や遺族、近隣住民らによるアスベスト(石綿)の訴訟問題について、10月9日、上告審判決で初となる国の賠償責任が認められた。
(参照:イタイイタイ病 80歳男性2人を新たに認定)
Photo:Danger Asbestos By Lincolnian (Brian)
アスベストは耐火材や断熱材に使用されてきたが、吸い込むと中皮腫や肺がんを発症するリスクがあり2012年には使用が禁止された。いったん体内に入り込むと長い時間をかけて発症に至るため「静かな時限爆弾」とも言われている。
大阪南西部の泉南阪南地域では戦前からアスベストの工場が集中していたが、排気装置の設置やマスクをつける指示などもされていなかったという。多くの人がじん肺、肺がん、悪性中皮腫などに苦しみながら亡くなっており、国の責任が問われてきていた。しかし、これまで訴訟で国に健康被害の賠償請求をするも、2011年には不当に棄却されるなど状況は難航。今回判決が下った訴訟は元労働者や遺族ら計89人が起こした集団訴訟であるが、そのうち54人に関しては3億3000万円の賠償を命じた判決が確定。28人は損害額算定のため大阪高裁に審理を差し戻し、7人は国の責任を否定した時期に就労していたため敗訴が確定した。