22日、米シカゴ大の中村祐輔教授の研究チームが米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」にて、がん細胞の分裂を阻害する化合物を発見したことを発表した。
(参照:乳がん再発に骨髄中の特定物質が関与)
Photo:Chromphobe Renal Cell Carcinoma By euthman
研究チームはがん細胞の増殖する働きに関与する「TOPK」という分子に着目し、約30万種類という化合物の中からTOPKの働きを阻害する化合物を発見した。マウスの実験では、肺がんの個体に化合物を注射したところ6匹のうち5匹のがん細胞が完全に消滅した。TOPKの働きが阻害されたことでがん細胞の分裂が止まったものとみられる。今後は臨床試験を進めていく予定。
今回の研究成果を活用し、現在では分子標的薬やがんワクチン医薬、抗体医薬の研究・開発を行っているという。分子標的薬とはがん細胞を分子レベルでとらえ効率よく作用する薬である。がん細胞を狙い撃ちするというメリットはあるが、正常細胞にも作用し重い副作用が起きることもある。TOPKは乳がんや肺がんなどの様々ながんで発現するが、正常な組織では発現がほとんどないことから、TOPKに有効な薬剤は多くのがんに対応し副作用のリスクも低いと考えられる。