アフリカ大陸の北部に位置するスーダンでは、医療施設や人材の不足、産前・産後ケアの認識不足から妊産婦死亡率が世界平均よりも高い傾向にある。この現状を改善するため、JICAによって2008年から「フロントライン母子保健強化プロジェクト」が進められてきた。
(参照:紛争地帯で女性の人権問題に取り組む産婦人科医 「サハロフ賞」受賞)
Photo:Peacekeeping – UNAMID By UNAMID Photo
スーダンの妊産婦の約7割が自宅で出産しているという。世界保健機関(WHO)のデータによると、2008年のスーダンの妊産婦死亡率は10万人あたり1,107人であり、世界平均の260人に比べ非常に高い。妊産婦や乳幼児の利用できる医療施設や人材が不足し、産前・産後ケアに関する認識が低いことなど、妊産婦死亡率につながる要因は多く存在している。
2008年6月にはJICAが妊産婦と新生児の死亡率を減らす目的で「フロントライン母子保健強化プロジェクト」を開始。村落助産師の重要性が認知されていくとその数も大幅に増加し、政府が雇用する村落助産師の数は2010年には358人だったのが、2013年には3,046人となった。これまで収入の安定しない助産師が報酬を求めて危険な出産を介助することが多く妊産婦の死亡を引き起こすということが少なくなかったが、行政のサポートを得たことによって助産師という職業が安定性を高め、そのような状況も改善されつつある。スーダン政府も村落助産師を含めた医療従事者の増員を視野に入れての体制強化に乗り出しており、さらなる改善が期待される。