【医学部進学のために中高一貫校は有利なのか?PartⅠ】
中高一貫校の魅力
高校入試で鍛えられた学力を活かすという意味では一貫校でない方が有利だと考えることもできる。例えば、競争力や短期に学習項目を習得する力を育成させるのであれば、高校3年間で学力UPを図るカリキュラムを有する都立西校の実績が高い(2009年は22名が国公立医学部に、2010年は23名が医学部に合格)。一方、開成や海城などの高入生の医学部や東大の合格率は低く(日能研の情報)、中高一貫校に高校から入学するのはお薦めできないという。逆に、筑波大附駒場や灘のレベルになるとむしろ高入生はほとんどが東大または国公立医学部に入学という高合格率となる。
進学実績だけじゃない?私立一貫校の魅力!
大学の進学実績だけで選ぶなら、高校受験して価値があるのは、灘、ラ・サール、筑駒、などの御三家クラス。それ以外は教育理念やカリキュラムを個別に見て、家庭の教育方針や信条、子どもの性格や特性に合わせた学校選びが必要だ。
総合的に考えれば、私立中高一貫校は魅力が多い。独自の教育理念の下、一時期のゆとり教育の時代にあっても指導法や学習効果、教材などを研究し、学力増進に努めた学校も多い。図書館や、実験室などの設備も一貫校なら効率的な設備投資により充実させることが比較的容易だ。例えば、武蔵中高の図書室(6万冊の蔵書数)は大学のもの(約65万冊)を含め全国的に見ても蔵書数は多い。公立高校では1校あたり1万冊くらいだろうが、私立中高一貫校は3万冊~7万冊の蔵書を誇る。開成は理科の実験の時間数が非常に多い(研究者養成の国立大学の入試問題は実験考察系が多いことを意識してか)。
また、私立中高一貫校の中にはキャリアガイダンスを行っている学校が少なからずある。様々な分野で活躍しているOB/OGが自分たちのキャリアについて直接在校生にその魅力を伝える。桐朋は同窓の先輩諸兄から様々なキャリアについて学ぶ機会を得られるし、女子校では共立女子、富士見女子、鴎友も力を入れているようだ。医師に限定すれば、江戸川学園取手は定期的に現役の医師を講師に招き、医学部志望動機を高める工夫がなされている。
筆者紹介
七沢英文(ななさわ・ひでふみ)
中央大学法学部卒 塾講師、家庭教師などを経験。
1997年より医学部受験専門予備校YMS講師、現在YMS取締役兼同機関誌「Lattice」編集長。
NPO法人「ジャパンハート」理事。
趣味:オートバイ、車、写真、映画鑑賞、麻雀、料理、旅行など (しかし、現在まったくできない状況、泣!)
※記事掲載元:「医学部進学のために中高一貫校は有利なのか?PartⅠ」