第3回「対馬ルリ子先生」最短の産休だったにも関わらず、休み明けにお産をとるのが恐かった

私は現在、東京・銀座で女性総合外来を開設している。私自身は産婦人科医で、18年間、東大産婦人科学教室に所属していた。その後、周産期の専門家として都立病院の総合周産期センターにいたが、毎日次々と救急搬送されてくる重症の妊産婦を診ながら、「もう少し早くリスク管理ができていたら…」と残念な思いにかられたものである。

私は、研修を続けながら二人の子を産み育て、低用量ピルの認可問題、リプロダクティブルヘルス&ライツ、生涯にわたる女性の心身の健康へと、新しい医療・保健に興味を持ち、仕事を広げてきた。

現在では、産婦人科ばかりでなく、内科、心療内科、乳腺外科、泌尿器科等の女性医師たちや、看護職、カウンセラー、鍼灸アロマセラピストなどと協力し合い、女性の検診や健康相談、外来診療などをする現在の施設を運用している。

ここでは、避妊、性感染症、月経困難症、更年期、甲状腺疾患や糖尿病、禁煙、うつ、不安神経症、摂食障害、乳がん検診、尿失禁などを扱い、さまざまな職種の専門家が連携している。もちろん、地域の総合病院、各大学病院とも連携し、恵まれた環境といえる。

女性医師が、仕事を続けながら妊娠・出産、子育てをしていくのは大変である。誰もが体は一つしかなく、時間も24時間しかない。だから、まじめな女性ほど「一人前の仕事ができないのならやめるしかない」と考えてキャリア継続を断念しやすい。

いったん家庭に入れば、第一線の医療現場に復帰するのは、かなりの勇気を要する。能天気で最短の産休しかとらなかった私でさえ、休み明けにお産をとるのが恐かった。

だからこそ、女子医学生や若い女性医師には、まずは、どんな形でも「仕事を続けるぞ」という意気込みを持ってほしいと思う。

私たち女性医師には、医師の激務に耐えうる丈夫な体をくれた親や祖先の血が流れ、育んでくれた社会の期待がかかっていることを忘れず、少々の意地と自尊心を持って、仕事を続けてほしいと思う。

先生のご紹介

ウィミンズ・ウェルネス
銀座クリニック院長
対馬ルリ子(つしまるりこ)
経歴
1984年弘前大卒。東大病院、都立墨東病院などを経て
2002年開院。03年女性外来をすすめる会「女性医療ネットワーク」
を設立し、女性の生涯にわたる健康のため、さまざまな活動を展開。



このエッセー・コラムが参考になったと思ったらソーシャルメディアで共有してください。


facebookもチェック
非公開求人のご紹介!キャリア支援をプロがサポート
女性医局では女性医師のお役に立つために女性のお医者さんがらの体験レポートや、女性医師のキャリア形成におけるコラムを頂いております。医師転職における不安や悩みを様々なコンテンツを通して、前向きに解消していくことにお役立ちいただけると思います。
無料会員登録